どうして、こんなことに――天体のメソッド第12話。

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あのあと、何が起こったか。冒頭で明かされた事実に衝撃を受けて、その後は絶望のどん底に突き落とされて、ラストシーンまで立ち直れなかった。過去回で、見返すのを躊躇するくらいでつらいなんて言っていたのが、だだ甘すぎだったって、思い知らされた。
切なくてつらい話が好きなんて、ことあるごとに言っていたけど、今回はもう、つらすぎて見ていられなくて、途中で何度も止めては落ち着いてからまた続きを見て、また止めて、の繰り返し。
乃々香の言葉通り、どうしてこんなことに……。


ノエルが言っていたこと。円盤は、「次の願いに呼ばれて(どこか別のところに)いく」。乃々香たちに呼ばれた時も同じ、つまり、円盤には前の滞在地が存在したってことなのに、乃々香たちに呼ばれて霧弥湖上空に現れた際に、「世界中を大混乱に陥れた」。あたかも、それが初めてかのように。
その理由が今なら分かる。円盤は、願いを成就させた後、その存在全てをなかったことにしていたのだから。だから霧弥湖町に現れた時に初めて出現したかのような扱いを受けたし、乃々香たちの願いの成就を見届けた後、全てがなかったことになった。

乃々香が校庭で必死に問いかけた時の、「今は思い出さないかもしれないけど」って台詞。既視感があるなあと思いだしてみると、4話での柚季の、「住んでる町は違うけど、クラスのみんなが協力してくれたら」という台詞と似ていた。あの時柚季本人は一生懸命でも、理解はされなかった。今度は、乃々香が必死に問いかけるも、3人はただ戸惑うばかりで、理解はされず、あの場面との類似性が感じられる。

そして、ただ、円盤がないだけで同じ過去を繰り返しているように見えて、そこかしこが違う世界。引っ越してしまった汐音や、柚季・こはる・湊太と同じではなかったクラス分け、そして、遥かに荒廃が進んだ天文台。改変された部分はすべて、乃々香を苦しめる変化ばかりなのが、やはり残酷だなあと感じた。

望遠鏡が崩壊していたのもきつかった。
乃々香にとってあの望遠鏡は、皆で過ごした日々の傍らにあった存在であると同時に、ノエルとの出会いを呼び起こす象徴のようなものだし、天体望遠鏡一般が母を思い起こさせる存在でもあるのだから、それが無残に崩れた姿を晒している、しかもそれがノエルとの再会の望みを抱えて登った先にあった、っていうのは、どれほどの衝撃と悲しみを乃々香が受けたのか、想像もできない。

考えなおしてみると、改変された部分のオリジナルは全て、乃々香にとって都合が良すぎたと考えられなくもない。幼少の頃の思い出深い天文台がかつてとさほど変わらない姿でそこにあったり、あの頃の友達が全員同じクラスに居たり、汐音に至っては親元から離れて一人で暮らしながら乃々香を待っていた、なんて、円盤のない町での出来事のほうが自然に見えてしまう。自分にとって都合が良すぎた世界、つまりあれは現実ではなく夢の話……、ふと、そう思ってしまっても無理はないと思う。けれどこれは、一度そう思ってしまったら際限なく疑いが膨らんでしまうという、危険な想像。


そして心折れそうになった乃々香を救った汐音が、とても神々しく見えた。かつて孤独から汐音を救い出し、道を分とうとする彼女を必死につなぎとめた乃々香が、今度は汐音に絶望から救い出されるなんて、もうなんと言えばいいのかわからないほど良い場面だった。


乃々香と汐音は二人でひとつ。やはり、分かつことなど出来やしない。願わくば、二人の未来に幸あらんことを……。