進もうとする先は――天体のメソッド第4話。

天体のメソッド 1(特装限定版) [Blu-ray]
前回書いたとおり3話見たあとはすごい沈んで、4話観るのが怖かったんですけど、一週間頭を離れなかった最悪の展開とは違って少しは救いがあってよかった……と。
あのあと完全に乃々香の心が折れてしまったままだと立ち直れなかったかも。そうじゃなくてよかった。


エンディングで、立ち上がろうとする乃々香の姿に救われたとはいえ、冒頭のきつさがなくなるわけではなく。3話から引き続き重い導入部。


「みんな、一緒だった。柚季も、こはるも、水坂くんも、……戸川さんも。」
過去を思いだしながら心の声が漏れだすかのように、乃々香は7年前一緒だった4人の名前を口にするのだけど、汐音の呼び方が、「汐音さん」ではなく、「戸川さん」に戻っていたのが悲しかった。
ぶたれてでも名前で呼ぼうとし、幼稚園後に迷い込んでから彼女を心配して口にしたのも「見つかったかな、汐音さん」と名前だったのに、苗字に戻ってしまった。
少し前にはぐれたばかりだし、見つけられなかったとはいえきっと彼女は近くに居る、それだけでもこれだけ憂鬱で心細いのに、自分が過去にやったことは遥かに酷いことだった。汐音からしてみれば乃々香は、大好きな友達で、いつも一緒で、それがずっと続くと思っていたのに、ある日突然何も告げられずに乃々香は居なくなってしまって、どれだけ探しても見つからなかったのだから。その時汐音が感じていた寂しさや悲しさは、今の乃々香のそれよりもずっとつらかったに違いない。
そんな仕打ちをして、しかもそれを忘れていたのだから、汐音の怒りは当然のことで。汐音が乃々香にあれだけ冷たく当たっていたのはそれが理由と、ここで気づいてしまったら、もう名前でなんか呼べない。こんなことをしてしまった自分にはあの頃のように名前で呼ぶなんて許されないって、深い深い絶望と後悔が滲んでいて、胸が痛んだ。
それに乃々香は結局、涙一つこぼさなかった。
ショックが大きすぎて涙すら出なかったんだろうと思う。柚季にぶたれて、汐音にダメ押しの捨て台詞を吐かれて、ただ立ち尽くす乃々香の姿は、泣き崩れるよりもずっと彼女の苦悩を表しているようで、重い。


朝のシーンも痛々しかった。
寝起きが悪いはずの乃々香なのに、意識ははっきりしているようで、沈痛な面持ちでそっと頬に手を当てる。きっと、昨日のことで心も身体も傷んで、眠れなかったんだと思う。


ところで、乃々香の願い事、ノエルは間違ってなかったんじゃないかな。ただ、条件が追加で付いていただけで。もしくは、汐音、柚季と湊太、こはる、乃々香の間の亀裂が、願いの成就を打ち消しているのか。
多分、5人が、あの頃と同じように仲良く、揃うことっていうのが願いなのかなあと思う。だとすると、乃々香が戻ってきた今、湊太が町を離れるまでの間、この半年しか、ウィンドウは開いていない……。


にしても、乃々香ってやることなすことがことごとく裏目に出るようで……。
円盤を呼ぼうと言い出したのは最たるものだけど、他にも、柚季を手伝おうとしたことも結果的に彼女の怒りに火を注いだ上に、裏切られたという思いを植え付けてしまったわけだし、朝何気なく湖畔に出てみれば、こはると柚季の二人に出くわし、柚季からのこはるへの印象までも悪化させてしまうし、バスターミナルで湊太と話をしているのも目撃されて更に柚季の怒りに火を注ぎ……。


ただ、柚季の怒りに火を注いでしまったとはいえ、湊太との会話は乃々香が立ち直るための重要なきっかけになったように見えた。こはるもだけど、湊太も、乃々香とは気まずくなってもおかしくなかったろうに、そうはならずに乃々香と関わってくれて、本当に良かった。
この二人との触れ合いがなければ、きっと乃々香も立ち直れなかったんじゃないかと思う。


そうして乃々香は、以前に聞いていた「花火がなくなったこと」を軸に何かをしようとするんだろうと思う。湊太との会話でも花火を話題に出していたし、ビジターセンターの展示でも花火の写真を特に意識していたから。
けど、すんなり行きそうとは思えなくて、嫌な予感がする。単に花火復活というの自体も難しいだろうけど、そういう意味ではなく。
柚季にとって花火中止は出会って間もない(とお互いに思っていた)乃々香にもさらっと話せる程度の出来事で、さほど柚季にとってウェイトは高くないのではないか。柚季が乃々香を突き放した時の一瞬の回想からして、何か他にもっとウェイトの高い理由があるはずで、それを乃々香は知らない。こはるどころか、「昔は何でも知っていた」湊太ですら知らない理由が。
それを知らない、いや、知れないまま行動する乃々香の頑張りは、果たして報われるのか。汐音に対して「空回りばっかり」していたのと同じことが、また柚季に対しても起こってしまうのではないか。そうなった時、また乃々香は再び立ち上がれるのか。


と、嫌な予感があってやっぱり続きが少し怖いのだけど、終盤で泣き崩れるこはるの元に現れた乃々香はほんとかっこよかった。表情や言葉、立ち振舞いに、友達を大切にしたい気持ちや過去の自分の行いを精算しようという責任感とかが込められていて、ますます乃々香から目が離せなくなる。

この先に待っているものは――天体のメソッド第3話。

すごい気に入って見てるこの作品なんですが、この3話がもう、ものすごくて。
余韻というか、ショックというか、切なさ、辛さ、そういったものがないまぜに、ぐちゃぐちゃになって、大泣きするしかなかった。


前々から事あるごとに書いてますけど、見ていると悲しさや切なさで気分が沈んでいくような物語が好きなんですよね。気が滅入るし、泣き続けるのも辛いし、表面上いいことないと思うんだけど……それでも見返したくなる、そんな作品がたまらなく好き。
1話の時点でその片鱗が見えたように思った、だから見続けようと思ったこの「天体のメソッド」ですけど、3話でこんなに泣かされるとは思ってなかった。まだ半分どころか、1/3も進んでないのに。


今回、乃々香がかわいそうでかわいそうで、本当につらいエピソードだった。


汐音と打ち解けようと健気に頑張れば頑張るほど辛辣な言葉ばかりを返されるし、あまつさえ本気でぶたれてしまうし、はぐれた彼女は見つからないし、逆に自分が迷子になるし、寂しさに追い打ちをかけるように日は暮れ、ひどく転んで傷だらけになって……と、一つ一つそれ自体が乃々香の心を折るには十分に酷な出来事なのに、悪いことは続くっていうのを地で行く。必死で汐音の名前を呼ぶ悲鳴にも似た声や、幼稚園跡でとうとう心折れてしまってうずくまる姿が痛々しくて、なんかもう見ていられなかった。
汐音を探して走りだした時、乃々香の心にあったのは、心配や、班長としての責任感だけじゃなかったと思う。汐音に幾度となく拒絶され、無意識のうちに忌避感が膨らんでいて、そのせいで汐音が居なくなったのに気づかなかった、理由も分からないまま嫌われたくないから頑張ろうって思ってたのに、結局怖気づいてしまっていた、そんな自分が許せなかったという思いもきっとあったんだと思う。ああまでされては無理もないと思うのだけど、それが許せないというのが乃々香の責任感というか、自分に対する厳しさなんだと思う。


片や、迷子になった乃々香を探す4人の間で交わされる会話も、考えうる限り最悪の流れで。
以前この町に住んでいたってことは、別に隠していたのではなくて話す機会がなかっただけなのに、あの流れでは決してそうは取ってもらえない。隠していた、そして影で笑っていたんだろうって取られるしかない。
あの4人にとって7年前の出来事は決して忘れられるはずがないし、ましてやその"張本人"がそのことを忘れたなんて信じられるわけがないっていうのも、この疑念を補強してしまうんだと思う。乃々香にはきっと、それを忘れてしまうだけの理由があったにも関わらず。

最悪の向きへの流れを、汐音がわざと作ってるんじゃないんだろうっていうのが余計に切ない。乃々香がただ嫌いで苛めたいなんてはずないのだから。汐音にとって乃々香は大切な、大好きな友達だったのに、7年前のあの日、乃々香は何も言わずにどこかに行ってしまって、乃々香にとって自分は別にどうでも良かったんだ、裏切られた、みたいに思ってるんじゃないだろうか。乃々香だって言いたかったんだけど、そんなこと知る由もなく。かと言って、あの時裏切られた恨みを募らせてひたすら苛めてるわけでもない。恨みしか残ってないなら、幼少の頃の写真を大切に取っておいたりはしないし、だいたい、苛めたいなら汐音から色々しそうなものだけど、乃々香につらく当たるのだって、乃々香から話しかけた時の返答でしかないのだから。たぶん、7年間ずっと引きずってきた恨みと、それでも乃々香が好きなんだって気持ちが混ざってただでさえ心かき乱されているのに、ひょっこり戻ってきた本人が目の前に居るなんて耐えられなくて、それで乃々香を遠ざけて心を鎮めたくて、結果として冷たく当たるしかないんだと思う。そうして、きっと無意識のうちに乃々香を傷付ける向きに流してしまってる。もしくは、ただ思いのままに行動した結果が自然に乃々香が一番傷付く結果になってしまうのか。どっちにしろ、こんなことなら、ただ嫌いで苛めているほうがマシなのかもしれない。それなら汐音をただの悪者にできるけど、そうじゃないのだから。

こはると湊太は話の間比較的冷静、というか沈黙を守っているけれど、二人共穏やかではない、と思う。
湊太にしてみれば妹が奇行に走るきっかけとなった原因だし、こはるにしてみれば仲良しだった幼馴染がバラバラになった原因だし。

柚季が必死に否定するのはなぜか。乃々香を信じたいというのもあるだろうけど、自分は騙されてたなんて信じたくないっていうのもあるような気がする。
その否定の仕方も、『乃々香がたとえ"あの子"だったとしても、私の友達』ではなく、「本当に("あの子"が)乃々香かどうかなんて、わからない(違うかもしれない)」、友達だと思っていた子が"あの子"なんて信じたくないということ。つまり、乃々香が"あの子"ならば、乃々香は忌むべき相手であるってことになってしまう。
柚季の祈りのような願いは、事実が確定した途端に裏返り、強い敵意に変わってしまうに違いない。ついに、初めて出来た仲間が実は全ての始まり、張本人だったなんて。ましてやそれを隠していたんじゃないかと疑わしいなんて。
このあと、柚季は乃々香にどんなにきつく当たるんだろう。怖くて考えたくもない……。


本当に、考えうる限り最悪の方向。


これだけでもう十分なのに、7年前を思い出すなんてなんて仕打ちなんだろう。その思い出は確実に乃々香を責め苛むのだから。
柚季の苦しみの原因を自分が作っていたということ。
柚季との関係はこの後決定的に変わってしまうだろうということ。
汐音の敵意の源も自分の過去にあったということ。
結果的に皆を騙していたのと同じだったということ。
何もないときに思い出したとしても酷いことになったはずなのに、今、ここでというのが本当に酷い。

加えて、ノエルの告白も重い。
先日(2話ラスト)、本人に面と向かって、町から出ていってと言ったのだと、気付かされるのだから。
そうとは知らなかった、なんてのは乃々香にとってなんの慰めにもならず、なんて酷いことを言ってしまったんだろう、それも一度ならず二度三度、と自分を責めてしまうに決まってる。ノエルはそれでも乃々香に優しくするのだろうけど、乃々香にはその優しさが逆に辛く感じられてしまうのだろうと思う。
あの告白はこの、乃々香が過去を思い出した場面で為される以外にないし、ノエルには何の悪意もないにせよ、結果としては乃々香を更に追い詰める事になる。


心も身体もボロボロになった乃々香を待っているのは疑念と敵意でいっぱいになった同級生たちで、唯一の味方のノエルには酷いことを言ってしまったばかりで、その子にすがるなんて許されるはずもなく。


何でも出来て、健気で頑張り屋さんで責任感も強い乃々香だけど、ただの中学3年生の少女でしかないのに、これだけの重荷を背負わされて、もうとっくに心折れてしまってるのに何も終わっていないどころか、これからが悲劇の始まりとしか思えない。


これが残酷でなくてなんというんだろうか。

さよならJA804K。

コスモス柄で丘珠に居たANAウィングスのDHC-8-300、JA804Kが本日最終フライトを終えました。
残念ながら出発地引き返しになってしまいましたが……。
ANA、DHC-8-300を退役 羽田/三宅島線ラストフライトは羽田引き返し - 機体記号 : JA804K | FlyTeam ニュース
記念として以前撮った写真を何枚か貼っておきます。今までお疲れ様でした。




















より手軽に翼を授かる。

この年末年始で、話題のLCCのうちAPJとJJPを試してみました。
FSCに慣れてると戸惑う、と良く聞きますがどちらも思ったよりは普通で、悪くなかったです。今後も使うかな。

APJ

アナウンスの内容にしろタイミングにしろ、まんまANAだこれ。あまり航空機使わないヒト向けらしきセリフが混じるのは、今までとは違う客層が掘り起こされてるってことなんかな。
搭乗時に窓側から順次積んでいくのは良く出来てる。通路側が埋まってる状態で窓側に座ろうとすると一旦どいてもらう必要があるけど、それが減らせる。
KIXのT2は造りの簡素さがなんだか万博のパビリオンっぽくて、ちょっと懐かしい感じ。

JJP

アナウンスの内容、タイミングが知らない感じだったりキャビンクルーへ機長からの連絡がアナウンスで入るとか、新鮮な感じの機内。日航カンタスはこうなのか、もしくはジェットスター本体がこうなのか。
KIXではLCCなんだしT2かと思いきやT1だし、挙句の果てにPBB使うし、便利なんだけどいいのかそれ。
機内誌があるのもちょっと意外。まあ薄いし、隔月発行なのはらしいかも。
ウェブチェックイン後印刷する必要があるのはちょっと邪魔くさい。携帯の画面にバーコード表示するのでもいいと思うんだけどなんでだろ。
コールサインはオレンジライナー。知ってないと聞いても分かんないですね。

全般

預け入れ手荷物を有料にしたがために持ち込み手荷物が大きくなってる感がある。結果、収納棚に収めるのに手間取ってプッシュバック開始が遅れるので悩ましい問題なんだろうなあと。
座席の間隔は短距離だし気にはならず。これで十分かなー。


こうして手軽に旅ができるようになると着陸枠も有効活用されるしいいですよね。

『明日また君の家へ』がものすごく刺さった。

しばらく放置していたダイアリーに、だらだらとめんどくさい話を書き始めたことからお分かりだとは思いますが、もう近年稀に見る大ヒット。


悲しくて切なくて、読んでると精神的にきつくて、気分も沈んでしまうような物語が好き。
心をかき乱されてつらいし、泣き疲れてきついし、読後の苦しさがずっと後を引いて何も手につかなくなる。決して快かったり元気になったりなんかしなくて、むしろその逆なのに、その感覚をなぜか求めてしまって、何度も読み返したくなる。そんな作品がたまらなく好き。

けど、そういう作品ってなかなかないんですよね。単なる悲しい話、暗い話じゃあダメなんです。そういうのだと気分が沈むだけで、もう嫌!ってなる。
また、凹まされてそれがいい感じになってきても、エンディングが綺麗にまとまりすぎだとまたダメで。爽やかな後味で、かき乱された感情が整えられて、そこで満足しちゃって後が続かない。

なんかこうやって書いてると、すごいめんどくさい奴に思えてくるけど、まあ実際そうなのかもしれない。


で、この『明日また君の家へ』ですが。
何気なく手にした本で、全くの不意打ちだったのだけど、読む前と読んだあとでは何かこう、すべてが変わってしまった気がする。
ここ数日はもう、かき乱されて凹んだ感情をどうすることも出来なくて。
読み返すか、こうして思いの丈を吐き出すか、また読み返すか、余韻に浸って何も手につかない時間を過ごすかしか出来なくて。
つらいのに繰り返したい。気分が沈んで立ち直れなくなりそうな、恐怖にも似た感覚に襲われるのに、そこから抜け出したくなくなる。
こんな風になる作品は、これまで数えるほどしか知らない。


短編3本と中編1本で綴られたこの本。
前2本の"Skew Lines"、"again"でまずぎゅうっと胸が締め付けられて、ああこの切なさがなんかいいなあ、と。
綺麗に終わらなくて、ほろ苦い。
悲しいのに心の奥が少し、暖かくなる、そんな一見矛盾した感覚が心地いい。

そして3本目の"よりみち"。このお話はほんわかできて優しい気持ちに。
悲しかったのが癒されるようで、なんだかいい気分だな〜っと。

そうして粒ぞろいの短編にいろんな思いを想起されて、中編"Virtual"に突入するわけです。
扉のキャプションに少し、不穏なものを感じながらも読み進めていく。
はじめは、微笑ましい幼馴染のじゃれあいで、なんだか嬉しくなってくる。けれどそこかしこに差し込まれるモノローグに不安を覚えつつ、進んでいくと、1話め(.25)の結びで「えっ」と。
そこからはもう一直線。巧みに編みこまれる回想で明かされていく一つの嘘と、それによって危うさを秘めながら形作られていく現在。一見幸せそうなのに、実は痛いくらいに切なくて、ページを進めるたび恐れが募っていく。
そして、膨らみきった嘘が、弾ける。

もう、泣くしかなかった。


そして訪れる束の間の安息と、畳み掛けるように突きつけられるもう一つの現実、もしくは、ボタンの掛け違え。


安易な救いなどなくて。



エピローグを迎えても、この心は深く作品世界に囚われたまま。

くろば・U先生の持ち味なのか、高密度に折りたたまれた内容が画面に込められてるように思う。何度読み返しても、瑞々しさが失われない。
そんなだからまた、何度でも繰り返す。
そうしてまた泣いて、凹んで、より深く囚われていく。

もう、抜け出せやしない。

ささやかでも、未来のために。


特定非営利活動法人うぐいすリボンへ寄付をしました。
焼け石に水かもしれないけど、
いろいろな作家さんの創作活動が萎縮して、作品が読めなくなるのは嫌だし。
表現の自由は、Webアプリケーションエンジニアにも関わってくる話だし。


少しでもいい方向へ事態が進むことを願って。