第三章の、幕が上がる。

Googleがついに公表した、Nexus One。端末の詳細はいくらでも紹介記事が出ているのでそちらに譲るとして、魅力的な端末が出たときの常、入手可能性について考えてみる。
最速なのは、購入代行業者を使って今発売中のを買う方法。これだと最速な代わり、端末代の529ドルに加えて代行料金が必要、さらに通信路の確保が必要になる。
Nexus Oneが現在対応しているのはW-CDMAのうち1,4,8の3バンドなので、ドコモのFOMA(プラスエリアを除く)およびソフトバンクモバイルのバンドには合致する。イーモバイルはバンドがあわない。なのでDoCoMoもしくはSBMの回線が必要になる。といっても手に入れた端末をショップに持ち込んで、「これ用の回線ください」と言っても相手にしてもらえないはずなので、他の端末からSIMを抜いて刺す形になるでしょう。iPhone SIMもしくはHT-03A SIMがこの目的には合うはず。128kパケットで良ければ、パケホーダイ契約済みのiモード機用のSIMも刺さるのかな?
後は、音声通話をしなければひょっとするとWILLCOM CORE 3GのSIMも使えるかもしれない。ただし、Android1.6では音声通話が出来ないSIMが使えない、という症状が出ていた*1ようで、2.xでも同じ可能性があり、要注意。

しかし、この方法はどう逆立ちしても難しい方法で、リスクも大きい。じゃあ、その辺で売ってるケータイみたいに普通に手に入るようになるのはいつなのか、そしてどんなカタチで手に入るようになるのか考えてみよう。
まず考えられる販売ルートは、SBMからの発売。去年末の発表のものとスペック的に一致するし、「いままで携帯を出したことのないメーカーの」という発言にも合致*2する。
では、iPhoneと同様にNexus OneSBMの独占販売になるのかというと、そうではないんじゃないかと思う。その理由は、彼らが目指しているものの違いにある。
初代iPhoneの発表の際、Appleはこう言いました。"Apple Reinvents the Phone with iPhone" Appleは電話を再び発明した、それがiPhoneだ、と。そこに込められた彼らの目標は、革命的な携帯電話機を作り出すこと。
対して今回、Googleはどう言ったか。プレスリリースではこう述べられている。"Google Offers New Model for Consumers to Buy a Mobile Phone" Googleは消費者に、携帯電話を買う新しいモデルを提供します、と。そう、彼らの目標は、革新的な携帯電話機を作ること自体ではなく*3、強力な携帯電話機を、くだらない制限なしで手に入れ、一段とモバイル生活を向上させること。その販売方法にかなりの力点が置かれているのです。
この目標に沿えば、従来どおりキャリアごとに端末が固定されている、iPhoneやそれ以前の携帯電話のような独占販売モデルを取らないことが想像できるし、アメリカでは既にそうなっている。これが日本においても踏襲されるなら*4、次のようなシナリオになるのではないか。

SBMのキャリアインセンティブつきと無しのモデルが発売され、SBM/DoCoMo双方の回線が選択可能。

アメリカでのモデルと同様で、T-MoがSBMAT&Tdocomoに相当するカタチ。なおこの場合、AT&TGSM/EDGEしか使えないのと同じようにドコモで使う場合に問題が出るのだろうか、という疑問が湧きます。AT&TGSM/EDGEしか使えないのはNexus OneAT&Tで採用されているバンドをサポートしていないからで、別にキャリアが制限を掛けて締め出しているわけではないんです。同様に、3Gでの使用は制限など特にかかっておらず可能だが、FOMAプラスエリアで採用されているバンドに非対応であり使用できない、といったカタチに落ち着くのではないかと考えられます。

SBMDoCoMo両者のキャリアインセンティブ付きと、インセンティブ無しのモデルが発売される。

最高のシナリオがこれでしょう。確かに現段階の事前情報を見ると、DoCoMoソニーエリクソンXPERIA X10を出し、SBMNexus Oneを出すといった構図が容易に想像できます。それはドコモ方式で型番が付けられたX10が技適を通っているのと共に、昨年末の製品発表会の質疑応答にて「最終検討中」と回答したことが理由にあります。が、この情報はX10がドコモ向けに販売されることを示しているのであって、ドコモ向けNexus Oneの販売を否定する物ではないわけです。
ドコモがNexus Oneを拒否する理由としては、他にも以下のような物が考えられます。

  1. Android端末はデータ通信を多用するのでトラフィックコストが膨大になる
  2. 同じAndroid端末なので、XPERIA X10と需要を奪い合う可能性がある
  3. キャリアのコントロールが難しい端末であり、ポリシーにあわない

しかしながら、最初の理由は既にHTC Magicを出した上にX10を販売するのであれば、加えてバリエーションが1機種増えたとしても問題とはならないでしょう。同じように、3番目の理由も拒否する理由としては弱い。最後に残るのは2番目ですが、X10、Nexus Oneのどちらかにユーザが振れたとしてもキャリアから見ると自社回線のユーザとしては変わりなく、さしたる違いはない*5のです。そうであれば、X10のみに限定しNexus Oneの方がいいというユーザをみすみすSBMに逃がすよりは、両端末をそろえる戦略を取ると考える方が自然です。というわけでこれらの点は問題にならないと想像できます。
このように否定材料はなく、加えてGoogleはマルチキャリアでの販売を指向しているのですから、このシナリオもあながち荒唐無稽ではないでしょう。

SBMのキャリアインセンティブ付きのみが発売される

この可能性もないとは言えない。SBMがキャリアインセンティブを出す代わりに独占販売を要求し、ドコモからは拒否された場合、Googleの選択肢は二つある。一つ目は、独占販売を許してキャリアインセンティブ付きの物を実現する道。もう一つはインセンティブなしの物のみを販売する道。このうち、後者は端末販売価格が高価くなるため取りづらく、実際には前者の道を取ることになるでしょう。


さて、長々と考えてきましたが、どちらのシナリオでもいいです。くれぐれも最悪のシナリオ、「日本は特殊で費用対効果が悪いので、他国への展開を優先し日本へは投入しない」なんていうのにはならないように願いたいですね。

*1:なのでWILLCOM CORE 3Gや日本通信のDev Phone用SIMが使えなくなったらしい

*2:ハードメーカーのHTCはベテランだが、Google自体をメーカーとみなせば初になる

*3:その道はとっくにAppleが踏破して大成功を収めた後だ

*4:その可能性は高い

*5:これが端末特性が大きく異なる端末の場合はトラフィックコスト等違いが出てくるわけですが、この2機種はハイエンドのスマートフォンですから端末特性は似ている