7年越しの願いの成就が、なぜこんなにも残酷なんだろうか――天体のメソッド第8話。

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全編を通じて美しい映像の本作ですが、教室いっぱいに広がる星空のシーンはまた、それに輪を掛けて美しい。そんな舞台に包まれて紡ぎ出される7年越しの二人の想いもまた、切なく美しかった。
そして、こんなに嬉しくて暖かい、二人の『再会』。湊太が「いつもべったり」と評していたけれど、その通りの、乃々香と汐音は二人でひとつ、分けられるはずのない存在で、その上乃々香にとって汐音は母が遺した忘れ形見のようなもので、それなのに道を分かってしまった二人が、とうとう心通わせられたんだから。


なのに。


汐音は気づいてしまったんですよね。願いが叶うことへの代償に。
柚季が指摘してた、円盤が来てから流星群は見えていないという事実。
ノエルが告げた、今年はよく見えるという予言。
同じくノエルの、自分は円盤そのものだという言葉。
この3つから、何が起こるのかは明白で。それが願いの成就の代償だということも、ノエルの言葉からも導き出せるし、幼少の頃『円盤さんの本』を持っていた汐音なら、円盤が訪れたあと何をして、その後どうなるのかをよく知っていたはず。
それ故彼女は、ノエルを守るため、長い間待ち焦がれて、とうとう取り戻した乃々香を再び手放すしかなかった。もはやノエルは乃々香と同じくらい大切な存在なのだから。それに汐音は、ノエルが乃々香にとっても大切な存在だということを知ってる。だから、ノエルを守ることで、乃々香が再び大切な人を失わなくて済むようにしようとしているんだと思う。
こんなことなら、あなたが、私の知っている乃々香じゃなかったら良かったのに。
そう汐音は思ったのではないだろうか。


それは、悲壮な決断。
なんて残酷なんだろうか。


ところで。
今回乃々香は泣いていたけれど、この子が泣くのってほとんどなかったように思う。1話でノエルに謝りながら泣いていた以来で、他には7話で泣きそうなのをこらえていたシーンしかなかったはず。

今の乃々香が泣くのは、決まって自分を責める感情が混じっている時で、ただ悲しいとか切ないとか、それだけでは涙ひとつこぼさないように見える。1話ではノエルを傷つけてしまったという後悔があったし、7話では母に対する負い目と、思い出すことをやめた自分を責めていた。8話では汐音を傷つけて、それをも忘れてしまったことを悔いて、そんな自分が酷いと思っている。
ただ悲しいだけじゃもう乃々香は泣けないんだろうか。幼少の頃はそうでもなかったように見えるから、やはり母を亡くしたことが彼女を変えてしまったのか。その時覚えた、悲しみを押さえつけることをやっぱりやめられないんだろうか。それは却って自分自身を傷つけるのに、いろいろ無理していそうで、心配になる。


思い過ごしなら、いいのだけれど。