テレビ3D時代って本当に来ますか?

アバター」の上質な3D映像体験もさめやらぬ今月、いよいよパナソニックフルHD 3Dテレビが発売されます。続いて6月にソニーも3Dテレビを投入し、ついに家庭で3D映像が体験できる時代が来ることになります。
とは言っても、「映画館でならともかく家のテレビで立体映像を見るなんて、流行らない」という言説も良く聞かれます。その説にも一理あるかもしれないし、単に進歩を拒絶しているだけなのかもしれません。さて、実際にはどうなるのでしょうか。
私は、「家庭で3Dを日常的に観る」っていう時代が本当に来るのかどうかは確信が持てません。ただし、それを可能にする機器*1は確実に普及すると考えます。


ここで簡単に、3D映像を見るには何が必要なのかをおさらいしておきましょう。私たちが何かを見るとき、右目と左目で同時に対象を捉えます。この際、右と左は距離が離れているため、それぞれ異なった映像が見えます。脳はその2つの映像を処理し、立体的に見えていると感じられるわけです。
2次元のスクリーンで脳に立体が見えていると感じさせるためには、右目と左目に別々の映像を与えてやればいい。これを実現するにはいくつかの方式があります。
その一つ目が偏光方式。これは、右目用と左目用の映像を別々の偏光で送り出し、偏光眼鏡で右映像が右目に、左映像が左目に見えるように遮光してやる物です。映画館用の映像システムでは、IMAX 3DやREAL Dがこのタイプ。
もう一つがフレームシーケンシャル方式。これは、右目用と左目用の映像を交互に表示し、液晶シャッター眼鏡でそれぞれの映像を右目、左目に振り分けてやる物です。映画館用ではXPANDがこれに相当します。
さて、これから発売されるパナソニックソニーの3Dテレビでは、両者ともフレームシーケンシャル方式を用いています。これが、「今後3Dが見られるテレビが確実に普及する」という理由になります。
この方式で立体映像を実現するためには、いくつかの技術要素が必要になります。

高速ディスプレイパネル

フレームシーケンシャル方式では、右目用と左目用の映像を交互に表示する必要があります。それも、切り替えが低速では片方の眼に映像が来ていないと知覚されてしまうので、高速に切り替える必要があります。なので、これを実現するためには高速なディスプレイパネルが必要になります。

液晶シャッター眼鏡

右目用の映像が表示されている場合には左目を、左目用の時は右目を遮光してやる必要があります。そのために必要なのが液晶シャッター眼鏡です。

フレーム情報送信機

現在、左右どちらの映像が表示されているのかを液晶シャッター眼鏡に伝達するための信号を送る必要があります。そのために要るのが送信機です。


と、これら3つの要素がフレームシーケンシャル方式の3Dテレビに必要なわけですが、この中で、高価な物というと高速ディスプレイパネルしかありません。そして高価な物は普及が難しいと相場が決まっているわけですが……、ディスプレイの高速性というのは3D専用なのではなく、通常の2次元映像を高品質に表示する際にも要求される技術要素で、もう既に各社が高速応答性を競っているのはご存じの通り。なので、2D映像の高速応答性を向上させていけば自然に3D映像も実現できる環境が整っていくことになります。あとはそこに、安価な2つの技術要素を加えてやれば立体映像の視聴環境が整うわけです。*2
立体映像表示が簡単に、かつ追加コストもほとんどかからずに実現できるようになったとき、その機能を付けない理由はなくなるでしょう。そうして、街で売られるテレビがすべて3D対応となるのもあながち荒唐無稽とは言えなくなるはず。


このように、現在の延長線上に3Dテレビがある以上、それが実際に頻繁に使われるかはともかく普及は進むのではないか、という結論が導けます。そうなったとき、何が観られるのか。とても楽しみです。

*1:3Dテレビ

*2:液晶シャッター眼鏡は現在は高価な物ですが、元々大して複雑な物ではないので量産が進めば価格は劇的に下がると考えられます。フレーム情報の送信機は赤外線リモコンとほぼ同じ仕組みで事足りるので、これも非常に安価。